介護用品の志水商会blog

介護用品屋さんの日々思ったことを書いてみたりします。商品の説明もたまにします。

拘束用品について

昨日の続きのようなそうでないような・・・

 

介護用品の中で、カテーテル抜き防止のグローブがあります。

↓こんなのです。

 

simizushoukai.com

 

こうした、カテーテル抜きや服を脱いでしまう等の行動の予防に

主に病院で使われるグローブですが、何種類かあります。

 

もっとも古い形は、グローブの手首部分を

脱げないようにひもで結ぶタイプです。

 

これは「ミトン」と

呼ばれていました。

 

勿論、台所で使われる、あの「ミトン」のことです。

グローブの商品名において「ミトン」という言葉を使った製品は今のところ存在しません。

 

わが国では介護を担うのは、主婦の仕事だった時期が長く、

台所用ミトンに紐をつけたものを自作していたわけです。

 

現在嫌われ者で、「拘束なんてサイテー」と言われるグッズに分類される

グローブも、歴史をさかのぼれば、

 

「お年寄りを介護する主婦が作ったアイデアグッズ」

 

です。

 

もう一つ、

 

亡くなった父は、老人ホームの職員さんたちに

「こんなのが欲しい」

といわれると、作ってしまう人でした。

家族から言わせてもらうと「器用貧乏」を地で行ってる人だったと思います。

 

ある時

車いすからのずり落ちで骨折して困る。ベルトのようなものはないだろうか」

と言われて作ったのが

「あすなろベルト」

でした。

 

現在で言う車いす抑制用のベルトで、現在ではもちろん

「拘束」

に当たります。

 

これは余談ですが

長年気が付かなかったのですが、このベルト

知らないうちにコピー製品が売られていて、「日進医療器」さんのカタログに

「Y字ベルト(あすなろベルト)」として掲載されていたのを

発見したときは仰天しました。

弊社は、日進医療器さんと直接の取引がないため、気が付かなかったのです。

 

それはさておき、どのような「拘束」用品であっても

当時の介護技術の中で、精一杯の善を行おうとする為に生まれたのであって

現在の感覚で過去を裁くような、

まして、

「昔の人は人権意識が希薄だから」

「昔の遅れたやり方で、昔の人はダメだから仕方ない」

「今の方がはるかに進んでいるから、昔のやり方はダメ」

 

などと見下すような教育を今の福祉学校では行っているのかもしれないと

私は恐れます。

 

例えば、高齢者施設では拘束は原則禁止ですが、

仮に拘束をしないで、事故を起こし、利用者のお年寄りが骨折した場合

訴訟になると1000万単位の賠償金を要求されます。

過去の判例を見ると1000万円では済まないです。それが普通。

 

拘束禁止はすばらしい思想だと思いますが、

安全な代替え技術もなく

人手もなく

道具もなく

どのようにして利用者の安全と介護者の利益を守るのでしょう。

 

現在だって、拘束しなければ対応できない状況は沢山あるのです。

過去を黒歴史扱いをするなら、拘束抜きで完全に対応できる介護技術を確立してからに

してほしいと思います。

 

やたらと拘束するのは問題ですが、

拘束を毛嫌いするのも、

「現実」と「理想の介護」のはざまで折り合いをつけることが

困難になって、介護者が一方的に苦しむのみになるのではないでしょうか?

 

介護は

「理想を追求し、身を粉にして、他人のために尽くしたい」

という人を追い込むためにあるのではないのです。

 

介護者には、本当に頭の下がる思いのする、

影の英雄のような方が多くいらっしゃいます。

 

介護福祉士を養成する学校の方には、未来の介護士の方たちに

「介護とは、かく、あらねばならない」

といった、理想を無責任に押し付けないように切に願います。

 

現実と理想の間で苦しみ、罪悪感を募らせてゆくのは

学校の先生ではなく、介護者なのですから。